イキガミ 全10巻
久しぶりに古本屋で立ち読みなど。
いや、ほんとは全然立ち読みする気はなくて
1月末までの割引券があって、買いたい漫画もあったので使おうと寄ったのだけど、
目当ての漫画がなかなか見つからず、探しているうちに
この「イキガミ」の背表紙に何となく惹き付けられ、手を伸ばしてしまった次第。
古本屋で立ち読みするときは、基本的にパラパラ読んでテーマと絵とノリ?を見るんだけど、
本作品はテーマが特に最高でしたね。
舞台は日本、と最初は思ってたんだけど、
あとから日本が他国として登場するので日本ではない、架空の国。使用言語は日本語。
この国では小学1年生の時に全員が特別なワクチンを接種しなければならない。
そのワクチンは1000人に1人の割合で致死性の物が混じっていて、それが当たった人は18~24歳の任意の瞬間に死んでしまう。
生きていることに心から感謝し、死んでも悔いが残らないように毎日を生きる、という名目。
まぁ常識的に考えてクソ制度。
そもそも実際人が死なないと生のありがたさを感じられないというのは想像力が余りにも貧しい。
でもそんな人もたぶんいるよね。
この制度が社会に受け入れられたこと自体が不思議だけど(受け入れられてないかもしれないけど)、そういう設定。
そして主人公は、0.001%の確率で死んでしまう可愛そうな人たちに死ぬ日の前日、死の宣告書、通称「逝き紙」を届ける配達員。
本当にやりたくないね笑
主人公は仕事柄この制度について思い悩むことも多く、不信感はどんどん膨らんでゆく。
この歪な世界で正気を保っていられるのか。
もちろん思想警察、レジスタンス、出てきます。
こういうのディストピアものっていうのかな?
結局死ぬ前の輝きは死ぬ前だからこそのものなのか。
ラストに関しては批判が多い。
確かに物語の進みがそれまでよりかなり早くて、やっつけ感がないこともない。
でもこれはこれで、現実的かなと。
あえて亡命という現実的な手段を用いるのが話全体を架空の話から自分たちのことに繋げる役割を果たしていると思った。
死んでいく1人1人の物語もかなり深いテーマがあり、改めて考えさせられることが多い良作。